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名古屋地方裁判所 昭和43年(ワ)1009号 判決 1968年12月04日

原告 田中鈴子

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 福間昌作

被告 李洋年

<ほか二名>

主文

一、被告らは各自、原告田中鈴子に対し一、一五〇、〇〇〇円、原告浅野兆に対し四五〇、〇〇〇円および右各金員に対する昭和四三年二月一日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二、被告李洋年、同朴都煥は各自、原告田中鈴子に対し二〇、五一四円、原告浅野兆に対し一六、三〇〇円および右各金員に対する昭和四三年三月二八日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三、訴訟費用は被告らの負担とする。

四、この判決は仮に執行することができる。

事実

一、原告訴訟代理人は主文第一、二、三項同旨の判決ならびに仮執行の宣言を求め、その請求の原因として次のように述べた。

(一)  原告らは昭和四二年二月九日、名古屋市緑区鳴海町字神ノ倉の県道上において、被告李洋年が運転していた被告朴都煥保有の貨物自動車に衝突され、原告田中鈴子は頭部外傷、顔面切創・骨折の、原告浅野兆は頭部外傷、顔面切創、左足骨折の各傷害を受けた。

右事故は被告李洋年の過失により発生したものである。

(二)  原告らと被告らは原告らの右受傷による損害の賠償につき、昭和四二年七月一〇日、次のような示談契約を締結した。

(1)  被告李洋年、同朴都煥は連帯して、原告田中鈴子に対し一一、四〇〇、〇〇〇円、原告浅野兆に対し六〇〇、〇〇〇円を各々支払う義務があることを認める。

(3)  右被告両名は右金額を昭和四二年八月から、毎月末日限り八〇、〇〇〇円宛、二五回に分割して支払う。

(3)  右被告両名が、右の分割金の支払を一回でも怠ったときは分割払の利益を失い、残金を一時に支払う。

(4)  被告趙樟浩は右被告両名の右の債務を連帯保証する。

(5)  被告李洋年、同朴都煥は原告らに対し、原告らが示談成立後要した治療費を連帯して支払う。

(三)  被告らは前項の示談契約に基づき、昭和四二年八月分から同年一二月分までの分割金(合計四〇〇、〇〇〇円)を支払ったが、その後の分の支払をしない。

原告らは右支払済の金員を原告田中鈴子の債権に二五〇、〇〇〇円、同浅野兆の債権に一五〇、〇〇〇円宛、各々充当した。

(四)  被告李洋年、同朴都煥は前記示談契約に基づき、原告らが右契約後要した治療費のうち、原告田中鈴子に対しては昭和四二年一二月末日までの分を、原告浅野兆に対しては昭和四三年二月八日までの分を支払ったが、その後の分の支払をしない。

そこで原告らは右被告両名に対し、昭和四三年三月一三日到達の内容証明郵便で、原告田中鈴子に対しては同年二月末日までの間に要した治療費二〇、五一四円、原告浅野兆に対しては同年三月四日までの間に要した治療費一六、三〇〇円の支払を催告した。

(五)  よって原告らは、被告ら三名に対して前記示談金の残金(原告田中鈴子は一、一五〇、〇〇〇円、原告浅野兆は四五〇、〇〇〇円)およびこれに対する遅滞の後である昭和四三年二月一日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の、被告李洋年、同朴都煥に対しては前記治療費(原告田中鈴子は二〇、五一四円、原告浅野兆は一六、三〇〇円)およびこれに対する遅滞の日である昭和四三年三月二八日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める。

二、被告ら三名は請求棄却の判決を求め、次のように述べた。

(一)  請求原因事実中、被告李洋年の過失の点を除いて全て認める。

(二)  原告ら主張の示談契約は被告李洋年に過失があったことを前提として締結したものであるところ、同被告は昭和四三年二月二七日右事故についての刑事事件において無罪の判決を受け、同被告に過失のなかったことが明らかとなった。よって右の契約は被告らが錯誤に基づき、なしたもので無効である。

三、証拠≪省略≫

理由

一、請求原因事実中、事故が被告李洋年の過失により発生したとの点を除きその余の事実については当事者間に争いがない。

二、そこで被告らの主張について判断するに、単に刑事事件において無罪判決を受けたというだけでは、被告李洋年に過失がなかったとはいえないばかりでなく、過失のあったことを前提として契約したとの点についても立証がない。

三、よって原告らの本訴請求は全て理由があるからこれを認容することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 西川正世 裁判官 磯部有宏 村田長生)

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